抗がん剤やその代謝物が腸粘膜を障害することで下痢が発現します

抗がん剤のイリノテカンは下痢が発現しやすいことで有名ですが、分子標的薬のスニチニブ、エルロチニブ、ラバチニブ、代謝拮抗薬のカペシタビンでも高い頻度となっています。

そのほか、シタラビン、5-FU、TS-1、イマチニブ、エベロリムス、オキサリプラチン、エトポシドでも比較的高い頻度で下痢が発現します。

多くの下痢は、投与した抗がん剤やその代謝物が腸の粘膜を障害することで発現します。イリノテカンでは、早発性の下痢と遅発性の下痢が誘発されます。

早発性の下痢はコリンエステラーゼ阻害作用による腸管の蠕動運動が亢進することにより起こります。後発性の下痢はイリノテカンの活性代謝物であるSN-38がグルクロン酸抱合されて胆汁中に排泄された後、腸内細菌のβグルクロニダーゼにより脱抱合され再びSN-38になります。SN-38により腸管粘膜が障害されて下痢が発現しますが、腸管循環するために、イリノテカン投与後10日以上経過してから発現する場合もあります。

下痢への対策としては、発現時期や期間、排便回数や便の性状、腰痛の有無などのアセスメントを行い、下痢が生じている間には脱水や電解質異常、栄養不良、肛門周囲の炎症などに気を配り、重篤化した場合には補液で水分のバランスを管理します。食事では刺激物を避け、食物残渣が少なく暖かくて消化のよいものを勧めることが必要です。

一般的な下痢に使用される腸蠕動運動抑制薬、吸着薬、殺菌薬、乳酸菌製剤、収斂薬などが使用されますが、早発性の下痢に対しては、抗コリン薬を投与することで軽快します。

イリノテカンによる遅発性の下痢は、好中球減少の時期と重なると敗血症などを併発し、致命的な経過をたどることがあるため注意が必要です。下痢を予防する目的で漢方の半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)を投与する方法もありますが、患者が便秘体質の場合便秘が増強されてしまうこともあります。