現在はがん診断の時から患者さんのニーズに応じた緩和ケアを同時に進める、という考え方が普及

がんと闘病中の患者さんは、痛み、全身倦怠感、食用不信、嘔吐、下痢という「肉体的な苦悩」は勿論、進行する病状への不安、絶望感、孤独感といった「精神的な苦悩」、長期入院で休職を余儀なくされ過程や社会における役割の喪失等による「社会的な苦悩」、人間として生きる価値観の喪失、他者に依存することにより自己尊厳の喪失といった「スピリチュアルな苦しみ」など、病状が進行するに連れて、その苦しみの原因は複雑になっていきます。

近代医学の発展によって多くの病気の治療が可能となりました。しかし、その一方で患者さん一人一人から疾患を切り離して捉え、治療するという近代医学の歴史は、医療者の関心を疾患に集中させ、患者さんの全体像への関心を失わせるというマイナスの一面も生じさせてしまいました。

そこで、がんを主とした治療困難な疾患を持つ患者さんとその家族を全体的に受け入れ、先述したような様々な困難と向き合っていくための、そしてその人らしく生き抜くための支援をし、家族の方々も含めて生きがいを感じられるような援助を目指すという考え方で誕生したのが「緩和ケア」です。

現在のように緩和ケアが普及する前の時代では、全ての抗がん地ろ湯が終了した段階で緩和ケアが開始されていました。しかし今日ではがんの診断がついた時点から患者さん一人一人のニーズに合った緩和ケアを同時に勧めるという考え方が普及しています。

欧米の先進国には後れをとっているものの、日本でも緩和ケア病棟専任医師、緩和ケア認定看護師、緩和薬物療法認定薬剤師をはじめとする緩和ケアを担う人材育成が本格化しており、その知識と技術は年々向上しています。

超高齢化社会に突入した日本では国を挙げて緩和ケアの発展に尽力しており、どの地域でどんな病状であっても、安心して人として尊厳を持ちながら人生を全うできる、地域ぐるみの緩和ケアの体制作りが始まっています。